いよいよ森へ出発です。黄金色の稲穂が、少しひんやりとした風にそよぐ畦道を歩いて森の入口へ向かいます。先頭の子は走るくらいの勢いでどんどん先に行って見えなくなりました。どこまで行ってしまったのだろうと思っていたのですが、ちゃんと森の入口で待っていてくれました。見学者がそろうまでには少し時間がかかったので、子どもたちは先に森に入ることになりました。一緒に出発すると、子どもたちが見学者の方に気を取られてしまって、しっかりと森を感じられなくなるから、子どもたちを先に森に入れる。という佐藤さんのご配慮です。
しばらく歩くと、粘土質の土がむき出しになっている斜面があり、子どもたちは登ったり降りたりして遊んでいます。長い急斜面をすべり台のように滑り降りたり、短い斜面を駆け上がったり子どもたちは服が汚れるのなんて気にせず自由に楽しんでいます。「子どもにやらせて大人が見ているだけではなく、大人も一緒にやらなきゃ!」という佐藤さんの声がけに見学者も斜面のぼりに挑戦して楽しみました。
そこを離れて林道を少し進むと、クマザサと雑木の間をぬって斜面を登るコースに行きました。木につかまらないと登れないところもある斜面です。「冬は雪がたくさん積もるので、この斜面をみんなで滑り降りるんです。」と園長先生が楽しそうにおっしゃっていました。想像しただけで楽しくなります。
私たちの近くで最近入園したばかりというの3歳児の女の子が、一人で懸命に坂を登っています。園長先生は、「ガンバレ!」ではなく、「ゆっくりで大丈夫だからね。ゆっくりでいいんだよ。」とやさしく声をかけていらっしゃいました。「○○ちゃんガンバレ!」私ならそういってしまいそうですが、その子は自分の力をめいっぱい使って斜面を登っているのです。そこに追い打ちをかけるように「ガンバレ!」といわれても、それ以上頑張りようがありませんし、辛くなるだけです。それよりも、その子の今をそのまま認め、それでいいんだよと安心できることばがけや、先生が後ろにいてくれるという安心感を持てるようにしてあげた方が、子ども自身の力が湧いてくるのだろう。そんなことを思いながら、クマザサをよけてゆっくりと歩みをすすめました。