当園は鞍馬小学校の学区内にあります。前にも書いたように鞍馬小学校は少子化の危機に直面しています。子どもたち一人ひとりを大切にする個に応じた教育を実践されているのに、その教育を受ける子どもが少ないのが残念です。
鞍馬小学校にも部活動がいくつかあり、その一つに柔道部があります。近隣の小学校から練習に来ている子も何人かいるのですが、それでも人数が少ないので、練習には工夫が必要です。同じくらいの体格や力量の相手がいないので、実践的な練習をするのが難しいのです。
その柔道部を友人が指導をしていることもあって、私もたまに畳の上げ下ろしを手伝いに行くことがあります。昨日、久しぶりに練習を見に行ったら、子どもたちがとても上達していたのです。特に高学年の子が、さまになっているというのか、フォームが良いというのか、前と比べるとずっと柔道らしく、かっこよくなっています。
練習が終わって、指導をしている知人に「みんな上手くなったね」というと、最近練習方法を少し変えたというのです。詳しく聞いてみると、以前は指導者が一方的に教えるだけだったのが、どうすれば技がよくかかるか、子どもが自分で考えるようにしたそうです。子どもと指導者が実際に組んで、動きながら「この体制ならどの技がいいかな?」「こうなったときにはどう体をさばくといいかな?」「それがいいね。」「もう少し手を上げた方が良いかも。」と考えるのだそうです。
普通なら、指導者がこの技はこんな時にこうかけてと教え、子どもが何度も打込みや乱取りをして身につけてゆくのでしょうが、乱取りや打込みをする相手がいないのですからそれもかないません。そこで、無いものねだりをしてもしょうがないので、今の状況で何ができるかを考えた結果、子どもと指導者が一緒に技について相談しながら練習する方法を選んだようです。
そうすると、その子はどうすれば技がかかりやすいか、相手がどんな体制の時にどのタイミングで技をかけると有効なのかを随分考えたそうです。その考えたことを、指導者相手に試してみると、思った以上にその技が有効だったり、それほどでもなかったりというのを経験し、それを繰り返す中で技を自分のものにしていったそうです。
「一緒に乱取りをしているとき、少し気を抜いた瞬間にその子に本気で投げられた。投げられてやったのではなく、投げられた。何年も教えているけどこんなことははじめてだ。」とその指導者は言っていました。
なるほどと思いました。子どもが自ら考え試してみる。それがうまくいくとおもしろい。そうすると、今度はこれをやってみよう、次にあれはどうだろうと、いろいろ試す。そのうちに技に対する理解も進み、自分の身体も動くようになるのです。
一方的に教えられ、やらされているだけでは、この子どもの主体性は発揮しにくいと思います。
子どもが自ら考え、相談し試すことができる環境を整えることによって、その子が自ら伸びる力を発揮していったのだと思います。