私の何気ない一言から、出汁昆布の味比べが始まりました。同じ量の昆布と水からひいた出汁を比べてみると、今まで使っていた昆布(A)より、新しい昆布(B)の方が味がしっかりしているように感じました。味比べを実際に行ってくれた先生も同じ意見でした。ところが、これだけではどちらにするか決めかねます。
迷っていると、調理の先生が「少し手を加えてみます。」と言うので私は自分の仕事に戻りました。しばらくして「さっきの出汁にだしじゃこや削り節などを加えてみました。」といって持って来てくれた2種類の出汁の味を比べてみました。他の食材が加わって少し複雑な味わいになりましたが、ここでもやはり今まで使っていた昆布(A)の出汁より新しい昆布(B)の出汁の方が味がしっかりしているというのか、濃い感じがしました。
またまた調理の先生から、実際に食べる状態に味付けをして食べ比べてみようと提案して、すぐにシンプルなおすましの味付けをしてくれました。これを食べ比べてみると、今までと少し違います。
これまで同様、新しい昆布(B)でつくったおすましは、相変わらず味がしっかりしていますが、今まで使っていた昆布(A)で作ったおすましがおいしく感じるのです。(A)は昆布の味が主張しすぎない分、他の食材の様々な味が感じられます。いろいろな味がバランス良く味わえるというとわかりやすいでしょうか。それに対して、新しい昆布(B)のおすましは、しっかりした味ではあるものの、昆布の味が立ちすぎていて、バランスが悪い感じがするのです。
ここまで試してみて不思議だと思いました。最初、昆布だけの時は、新しい昆布(B)の方が味がしっかりしていて、味わいがあると感じ、だしじゃこや削り節などを加えてからも、新しい昆布(B)の方が味がしっかりしていると思っていたのに、おすましとして仕上げると、前から使っていた昆布(A)が主張しすぎない分、全体のバランスがとれた結果的に「おいしい」味になったのでした。