園長ブログ

楽器ゾーン 11

2015/11/09

私たちは、いろいろな園を見学に行くことがあります。他園からすばらしい環境をいろいろと学ぶことができますが、その形だけをそっくりそのまま形だけ持って来てもあまり意味がありません。確かに形はすばらしいのですが、それはその園にいる子どもたちの今に合わせてあるので、そのまま当園に移植できないことも多いのです。もちろん、そこにある目的やねらいを理解して、それをヒントに自分の園の子どもたちにもっとも適した形を考え出すのが良いのだと思います。

もちろん、そっくりそのまま真似ることも大切です。そっくりそのまま真似ると言うことは、とても難しい事なのです。実力がないとできません。思いを巡らして、いろいろな背景や意味を理解しないと真似ることはできないからです。真似ることは学ぶことですから、そういう意味では他園の良いところをどんどん真似てゆきたいと思います。本当に子どもにとって良いことなら、何を差し置いても真似をすべきです。個人の好き嫌いや、都合で真似ようとしないのは、子どもたちにとって申し訳ないことなのです。

楽器ゾーンから鍵盤ハーモニカの音が聞こえてきたので、のぞいてみると、年長の上手な子が弾いていて、4歳児や3歳児が何人かまわりに集まっていました。

今年度の楽器ゾーンはこれからどんな展開を見せてくれるのでしょうか。楽しみです。

楽器ゾーン 10

2015/11/08

今年度の楽器ゾーンは、最初から楽譜が貼り出されていました。昨年度はしばらくしてから貼り出されたので、どうしてかな?と思って保育士の先生にたずねてみました。昨年度は初めて楽器ゾーンができたので、どの子もそうやって楽器に触れるのは初めてだったから、最初は楽譜を貼り出す事はしなかったのだけれど、今年の子どもたちの多くは、昨年の経験から楽譜を知っているので、最初から貼り出したと教えてくれました。

形だけから考えていると、去年もこうしたから、今年もこうする。になりそうですが、子どもたちから考えると、去年、楽譜を見て経験している子が多いので、最初から楽譜を貼りましょうとなったのでしょう。

子どもたちの今を、しっかりと見つめ、子どもたちの今に合わせた環境を構成してゆく事をしっかりと考えてゆかないと、せっかくの環境構成が意味のないものになってしまいます。

楽器ゾーン 9

2015/11/07

楽器ゾーンで起こっていたことは、子どもたちが学び合う学習の姿だと思います。学習というと、先生が生徒に一斉に教えて、生徒一人ひとりが自分自身で学習してゆくというイメージを持つことが多いと思いますが、それだけではなくて、お互いに刺激し合い、学びあい、上達してゆくことで、身についてゆく知識やスキルがあるのではないでしょうか。

そしてまた、この学びは、徐々に共同体や社会に参加してゆく過程ともとらえることができそうです。そうやって、知識やスキルを獲得しながら、社会でどう振る舞うと良いのかを学んでゆくのかもしれません。

徒弟制度の中では、師匠は弟子に、ただ単に知識や技術を伝えたのではなく、人と人が共同体をつくり、共に生きてゆくために必要なスキルも伝えたのだと言われています。徒弟制度の負の側面もありますが、社会人として生きてゆく術を学ぶというのは徒弟制度の良い面かもしれません。知識や技術ばかり豊富でも、それを活かして誰かの役に立てない事には、せっかくの知識や技術も宝の持ち腐れになってしまいます。

子どもたちの学びには、様々な形や方法があります。どんな形や方法をとろうとも、大切なのは、子ども自らが「おもしろそう!」と思い興味を持つこと「学びたい」「知りたい」「やってみたい」という、心情と意欲、そしてそこから導き出される態度なのだと思います。

楽器ゾーン 8

2015/11/06

「正統的周辺参加」について、しっかり学んだわけではないので、詳しくはわかりませんが、こんな意味なのかと思います。

何かのものごとに長けた人がいるとします。師匠とか親方とか呼んでも良いかもしれません。その人が、長けたことを実践している。その周辺には、いろいろなレベルの弟子がいます。師匠にはかなわないけれど、かなり熟練した人、最近上達してきた人、見よう見まねで行っている人、見ているだけの人、様々なレベルの人が師匠のまわりに集まって学び合うという共同体と言っても良いのかと思います。その共同体の中で、それぞれのレベルに応じて学び合うことで学習が進む。徒弟制において、熟達者から新入りに技が伝承していく形で学んでゆくことを言うのだと思うのです。

このような姿は日常の子どもたちの姿から見て取ることができます。例えば楽器ゾーンでは、最初から取り組んでいた子どもたちが上手になると、そのまわりに集まってくる子どもたちがいます。上手な子の動きをじっと見て学ぼうとする子どもや、「教えて」と頼んで教えてもらう子ども、そうして教えてもらい、練習をして上達してゆく子ども、そしてそのまわりには、おもしろそうだと集まっている子どもがいるのです。

楽器ゾーン 7

2015/11/05

楽器ゾーンに提示された楽譜をきっかけに、子どもたちが、自ら曲を演奏しようと取り組み始め、何度も練習しているうちに少しずつ、というより急激に曲らしくなってきたのでした。

一つの曲が形になってくると、最初に興味を持って取り組み始めた子どもたちは、ずいぶん上達しているものです。そこに、後からおもしろそうだと思って加わった子どもたちに最初から取り組んで上手になった子どもたちが教えていました。子どもどうしで学び合う姿、教え合う姿がそこにはありました。

そんな子どもの姿を見ていて、「正統的周辺参加」ということばをどこかで聞いたのを思い出しました。インターネットで調べてみたら、「正統的周辺参加」についてはいろいろと記述されていました。その一つを引用してみると次のようにありました。

以下、引用させていただきます。

ISディジタル辞典−重要用語の基礎知識−
正統的周辺参加論
セイトウテキシュウヘンサンカロン
Theory on legitimate peripheral participation

定義
カリフォルニア大学バークレー校の教育学教授ジーン・レイヴとパロ・アルト学習研究所研究員エティエンヌ・ウェンガー1)によって知られた教育理論。

説明
正統的周辺参加では,「学習」を「知識の伝搬」とは見なさない。学習者は,否応なく実践者の共同体に参加するものであり,また,知識や技能の習得には,新参者が共同体の社会文化的実践の十全的参加へと移行してゆくことが必須であるとする。「周辺参加」とは,最初は周辺的な分担であった新参者が,学習の進展とともに,徐々に中核部を担当することを言う。正統的周辺参加では,「学習」の意味を,従前の「知識の伝搬」と捉える視点から,「社会的な活動の中において,役割を果たせること」とパラダイムシフトさせた。結果として,「学習」と「教育」は分離される。
正統的周辺参加では,古参者(ファシリテータ)は必須である。しかし,古参者が「知識」を小出しにすれば学習できるというものではない。教師が本物の世界を見せて,その実践の場への参加の軌道を作り上げて,かつ,新参者が,自らの意志をもって自らを変えてゆくべく参加して初めて「共同参画者」となる。古参者と学習者は,相互に影響を与え合って社会を構成する。その中で,「学習」は学習者自身の営みであって,本人が学ぶという営みをどういう「コト」(実践)としているかが学習を左右する。

文献
1.Lave, J. and Wenger, E.: Situated Learning : Legitimate Peripheral Participation, Cambridge University Press (1991).

最終更新日
編集委員会編 (2012.04.01.)
金田重郎

2012 一般社団法人情報処理学会,情報システムと社会環境研究会編

http://ipsj-is.jp/isdic/1403/

楽器ゾーン 6

2015/11/04

それまで子どもたちが、バラバラに好き勝手に鳴らしていた楽器の音が、少しずつまとまりだしてきたので、「子どもたちに教えたの?」と保育士の先生にたずねると、特に教えたわけではなくて、ただ子どもたちがわかりやすい楽譜を貼っておいただけだと伝えてくれました。子どもたちにしてみれば、園に来て楽器ゾーンに行ったら、何か紙が貼られている、どうやら演奏方法のようだ、という感じだったのかと思います。少しは先生に聞いたでしょう。「これなに?」「どうするの?」でも先生は、聞かれたら答えただけで、特に積極的に教えたわけではないようでした。

楽器ゾーンがオープンしてから物珍しさもあって、子どもたちは、それまで思う存分楽器に親しみ、好きなように音を出してきました。たしかに、うるさく感じることもありましたが、思う存分遊んで堪能した頃に、楽譜がお目見えしたので、これに従ってたたいてみよう、弾いてみようというという気持ちになったのではないでしょうか。きっと先生もタイミングを見計らっていたのだと思います。

それからは、楽器ゾーンから聞こえてくる音が、どんどん音楽になってゆくのがわかるのです。先生が教え込んだわけではないのにです。子どもたちが自分たちで工夫して曲にしていったのです。子どもたちの力のすごさを感じることができて、とてもうれしくなったことを思い出します。

楽器ゾーン 5

2015/11/03

楽器ゾーンがオープンすると、子どもたちは早速遊んでいました。

実は楽器ゾーンは昨年度のこの時期にも登場していたのです。1年前、最初に楽器ゾーンがオープンしたときには、何種類かの楽器が置かれていただけで、子どもが好きに音を出すことができるようになっていました。オープン当初、子どもたちはとにかく音を出したいという感じで、楽器に触れていたので、かなり賑やかな状態でした。
また、防音や吸音のことも特に考えていなかったので、小太鼓の音などかなり大きく響き渡っていましたし、子どもたちの音の出し方もそれぞれが思い思いなので、正直言ってかなり「うるさい」状態でした。

ところが、何日かすると、それまではバラバラだった太鼓がリズムを刻んだり、鍵盤ハーモニカがメロディーを奏でたりしはじめたのです。「どうしてだろう?」と思って、楽器ゾーンを見に行ってみると、楽器の前の壁には楽譜のようなものが貼ってありました。子どもたちはそれを見て、小太鼓や鈴、カスタネットでリズムをとったり、鍵盤ハーモニカでメロディーを弾いたりしていたのです。

楽器ゾーン 4

2015/11/02

年長児を中心に幼児クラスの子どもたちが様々な楽器を知り、触れる機会を持つことができたちょうどその翌日、年長の子どもたちは、「ふれあい音楽会」に参加しました。
「ふれあい音楽会」は、左京区の園長会と保育士会が協力して行っている行事で、京都市保育園連盟の施設、八瀬野外保育センターに左京区の保育園の年長児が集まって、京都市消防局消防音楽隊の演奏を聴き、防火や防災について学ぶ行事です。
消防音楽隊の皆さんは、子どもたちの好きそうなアニメの曲や、一緒に歌えそうな曲を演奏しながら、防火や防災について教えてくださいます。それだけではなくて、演奏している楽器も紹介してくださったそうです。その楽器の紹介を聞いて当園の年長児たちは、とても興味を持っていたようです。「あれ!保育園にあるのと同じや!」「きのう、音出してみたな!」などと興奮気味に話していたようでした。

子どもたちが楽器に興味を持ち始めた、ちょうど良いタイミングで、「ふれあい音楽会」に参加できて良かった。子どもたちが、楽器紹介であんなに盛り上がるとは思わなかった。先生はそんなことを言っていました。

きっと、自分たちが前日に見て触って十分堪能した楽器が紹介されたので、うれしかったのでしょうね。「あの楽器、保育園にあるのとおんなじ!」と行っている子どもたちの瞳はキラキラ輝いていたのだと思います。

楽器ゾーン 3

2015/11/01

防音設備を施した楽器ゾーンというと、ずいぶん立派に聞こえますが、階段を上がったところの廊下の一部をしきって、たまごの緩衝材をつり下げたものです。しかし、そこには鍵盤ハーモニカ、小太鼓、鈴、カスタネット、トライアングル、シロフォンなどが置いてあります。それから、そこには古い足踏みオルガンもあって、ペダルを踏んであげれば、ちゃんと音も出ます。

保育士の先生から聞いたのですが、楽器ゾーンのオープンにあたって、そこに置く楽器について、子どもたちと一緒に確認したそうです。名前は?どんな音がするのか?どう使うのか?などなど、話を始めると子どもたちはとても興味を持って、年長児を中心に、いろいろなことを質問していたそうです。

先生方が、子どもたちと楽器を繋げる努力をしてくださったからこそ、子どもたちは楽器に興味を持つことができたのだと思います。子どもたちのワクワク、きらきらにつながる第一歩だと思いました。

楽器ゾーン 2

2015/10/31

今年の楽器ゾーンは、吸音材を配置して昨年より少し進化しました。保育環境には、物的環境と人的環境ということがよく言われますが、空間的環境もとても重要な要素です。空間も物的環境とも考えられるかもしれませんが。

子どもたちの活動は大きく「遊ぶ」「食べる」「寝る」の場面に分けることができます。また、楽器ゾーンができたように、遊びのゾーンも、子どもたちに合わせて様々に構成します。それも空間ですが、そういった保育の機能を果たす場としての保育室の「つくり」も重要な空間的環境です。壁や床の色と材質、家具の色や形、照明の色、明るさ、音の響き方、聞こえ方など様々な要素が、そこにいる人たちの五感をどう刺激するのかをよくよく考える必要があります。

今、保育室の音環境がとても気になっています。どうも音が響きすぎる気がするので、何とか対策を立てようと考えているところです。保育室の音環境というのは意外に見過ごされがちですが、とても重要な要素だと思いますし、保育室の音環境に関する研究も進んできているようです。

今年の楽器ゾーンを作るにあたって吸音のために考えた、たまごの緩衝材も一つのアイデアです。少し前に行ったライブハウスにもたまごの緩衝材に似たものが天井の一部に貼り付けてありました。

いろいろなことを参考にして、子どもたちにとってより良い環境を構成してゆきたいものです。

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